発表者:シックス・アパート株式会社 安田俊彦様 (文責:丹野)
■2006年、イントラブログの状況
2005年半ばくらいから、企業が社内のコミュニケーションや情報共有を目的にブログ導入する例が現れはじめた。多くはブログの新規性に着目したイノベータータイプの担当者による導入が多かった。
2005年末になると、ROIについて客観的な判断を行った上で、イントラブログを導入するケースが増えてきた。イノベーター層ではなく、アーリーアダプター層による導入が多くなってきている。
■大手小売業A社でイントラブログを導入
2005年12月に大手小売業A社はイントラブログの導入を行った。各店舗におけるスタッフのナレッジを全社的に共有するためである。店舗スタッフが売れ筋情報などを直接ブログにエントリする。
A社はまさにビジョナリータイプの企業であり、十分な事例が少ないイントラブログに対しては非常に積極的だった。「他社がやっているかどうかは関係ない」というA社担当者の言葉が印象的だった。
まずは店舗および書き込みを行うスタッフを限定してスタートした。トップからブログへの積極的な投稿が呼びかけられた結果、開始直後にトピックが発散しすぎる、情報量が爆発する、という運用上の問題が発生した。
投稿された記事には担当者は必ずコメントをつけるようルール化していたが、記事の多さに全ての記事にコメントをつけることは困難になった。
そこで各店舗ごとにブログへ投稿可能な曜日と時間帯を設定することにした。
その結果、一つ一つの記事を十分に読む余裕が生まれ、記事へのコメントが多くなった。コメントにさらにコメントがつくようになり、ブログ上での議論が活性化した。
■書き手の視点と読み手の視点の対立
イントラブログ導入にあたっては、「本当にみんなが記事を書くだろうか」という点を不安に感じるケースが多いが、A社の場合は「投稿が多くて困る」という嬉しい悲鳴が上がる状態となった。
「投稿が多くて困る」という状況は、次のような「書き手と読み手の視点の対立」によるものである。
#書き手の視点
* 個人の気づき、アイデアをそのまま発信したい
* これまで誰に伝えたらよいかわからなかった情報を発信したい、誰かに伝わってほしい
* 生の情報をそのまま入力したい
#読み手の視点
* 似たような情報を何度も読むのはいやだ
* 自分に関係のある投稿だけを読みたい
A社では、「投稿時間の制限」という運用ルールによる対処を行い、情報量をトップダウン的にコントロールすることで、ブログの効率的活用に成功した。
この方法のデメリットは、書き手のクリエイティビティの最大限に活用しきっていない点だ。
サーチエンジンなど情報を発見しやすくするためのツールを活用する、なんらかの方法で重要性が高いと判断された記事のみをRSSを利用して社内ポータルに反映する、などシステム的な対処が今後必要になるだろう。
とはいえ社内ブログでは投稿が多すぎて困るという例自体が少なく、情報量の爆発への対応策については、現在模索中である。
■企業向けブログツールのリリース
シックス・アパートでは、インターネット用のブログとして定評のあるMovableTypeの企業向けバージョン、MovableType Enterpriseをリリースした。従来バージョンのMovableTypeに、社内の既存システムとの統合するための機能やポータル機能などを追加した。
丹野瑞紀(たんの みずき) ベンチャー企業ではたらく男のブログ |
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