先日、新たな企業が社内ブログ構築サービスに参入しました。その会社の名は「スカイアークシステム」。 設立されてまだ1年半というベンチャー企業でありながら、「WEB Technology Integrator --- 最先端のWEB技術を、貴方のビジネスに。」を旗印に、急成長を遂げている会社です。今回、代表取締役の小林晋也さんにお話を聞くことができました。
<スカイアークシステムのイントラブログシステム>
スカイアークシステムは2004年9月に北海道の帯広市に生まれた、ビジネスブログ・CMSの構築やRSSソリューションの提供などを行っている会社で す。現在も本店は帯広に置き、北海道9名・東京5名という体制で活動しているとのこと。しかしその取引先には、名だたる大企業がずらりと並んでいます。小 さい会社でありながら、高い技術力を持ち、今年4月にはW3Cにも加盟しています。
先ごろ、スカイアークシステムは「イントラブログ構築サービス」をスタートさせることを発表しました:
■ Movable Type Enterpriseを活用した企業向け「イントラブログ構築サービス」提供開始 (スカイアークシステム プレスリリース)
同じく先頃リリースされた"Movable Type Enterprise"(シックス・アパート社製)をベースした、イントラブログ構築サービスです。スカイアークではこのサービスをグループウェ等の対抗商品と位置づけ、今後小~中規模の情報共有システム構築をターゲットとしてゆく、とのことです。
スカイアークのユニークな点は、MT/MTEをベースとして、そこに独自のプラグインを開発/追加することで個々の企業ニーズに最適なシステムを造り上げ ているところです。実際、サンプルとしてお見せいただいたシステムはとてもMTがベースとなっているとは思えないほど、ワークフローやリアルタイムプレ ビューなど様々な機能が実現されていました。スカイアークが提供するのは「ブログ」ではなく「ブログインターフェース(「素人でも入力可能」というブログ の特徴を維持しながら、単なる日記書き込み以上の機能を持つシステム)」である---小林さんはそうおっしゃいます。
<なぜMovable Typeをベースにするのか>
自社内に高い技術力があるのですから、オリジナルのブログエンジンから開発することは考えていないのでしょうか?そのつもりはない、と小林さんは明言しま す。その理由として小林さんが挙げたのは、まずMTがシステム開発のフレームワークとして非常に優れているという点。ライブラリが非常に充実しているた め、プラグインを開発し、システムを拡張することが容易に行えるそうです。システムを1から開発してしまっては、スピード開発、コスト削減、拡張性といっ た利点は大きく失われてしまいます。
またMTであれば、技術者を見つけやすいという点も小林さんは利点として挙げられました。スカイアークのお客様には、冗談で「たとえうちが逃げることが あったとしても大丈夫。第3者が分かりますから」とお話されているそうです。さらに小林さんは、プラグインを開発する技術者を「中身屋」、HTMLとMT タグで実際のシステムを開発する技術者を「タグ屋」と分け、「タグ屋」のレベルであればさらに開発要員を集めやすいと解説しておられました。
そうは言っても、エンジン部分をMTという他企業に依存することに不安は無いのでしょうか?小林さんは「MTはオープンで、それが利点なのだが、逆にオー プンすぎて不利なこともある。つまりスカイアークが作ったシステムの中身を見られて、コピーされてしまう危険がある」と指摘されています。しかし、それに よってMTベースのブログシステムに興味を持つベンダーおよびクライアント企業が増え、市場が拡大することの方が好ましいと話されていました。またスカイ アークにはこれまでMTベースのシステムを開発してきたノウハウがあり、簡単にはマネできないだろうと自信も示されていました。
<イントラブログの成功に欠かせないもの>
スカイアークシステム以外にも、多くの企業がイントラブログ市場に参入しています。そのことから小林さんは、イントラブログに市場性があると評価されています。
スカイアークが提供するイントラブログの特徴は、設置するブログは1つで、そこに多くの社員が書き込むというスタイル。もちろん技術力のある会社ですか ら、MTで1社員=1ブログ環境を実現することも簡単にできるそうですが、あえて多くの社員=1ブログという形式を提案されているそうです。小林さんは 「社員一人一人にブログを与えても、おそらく書き込みは少ないだろう。目的を持ったブログを用意し、そこに書き込ませるスタイルにした方が上手く行く」と 説明します。
確かにiUGのこれまでの勉強会でも、イントラブログを設置する目的を明確にすることが、その成功を導く要因の1つであることが何度も指摘されています。 1社員=1ブログ環境でも成果を残している企業はもちろん存在しますが、明確な目的を持つブログに書き込む方が、書き手側の社員にとってはやりやすい面が あるでしょう。特に「ブログを書く」という経験をしたことがない社員が多い場合はなおさらです。
実際、スカイアークでは「位置付けが明確にならないまま導入され、誰にも書かないまま放置されているイントラブログ」の置き換えを依頼されることがあるそうです。独自エンジンで構築されたイントラブログの場合は特に、システムを仕様変更・拡張しようとすれば大きな時間とコストをかけなければならず、「社員に使ってもらえる仕組み」を後から作るのは非常に難しくなります。スカイアークでは、導入するイントラブログは必ず位置付けを明確にし、その目的に合致するようカスタマイズされたシステムを「MT/MTE+プラグイン」という将来の拡張性を担保した形で構築されているとのことでした。
スカイアークシステムは総勢16名という少数精鋭でありながら、東京と北海道の2つの拠点を持っています。この2拠点の間で綿密なコミュニケーションを行 わなければ、企業のシステム開発にはとても対応できないでしょう。しかしスカイアークは、北海道にしかオフィスがなかった時代から、大企業をクライアント に持って成功を収めています。それだけ自ら情報共有・コミュニケーションというものに配慮し、実践している証拠でしょう。実際、スカイアークでは自らも社 内ブログシステムを導入し、4ヶ月で600エントリー、コメント800という成果を残しているそうです。高い技術力と明確な思想を持つスカイアークシステム、今後も活躍が期待できそうです。
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小林啓倫(こばやし あきひと) POLAR BEAR BLOG |
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