遅くなりましたが、先日のiUG研究会Vol.4での事例紹介の様子をお伝えします。
iUG研究会第4回の事例紹介では、以前インタビューもさせていただいた日本IBMシステムズ・エンジニアリング(株)の大川宗之さんにNotes/Dominoを利用した社内ブログの事例についてご講演いただきました。
以前のインタビューと重複する点もあるかもしれませんが、順を追って内容を紹介しますと・・・。
<導入の背景>
1.トップの意向
IBMにはPortal製品の技術者による障害情報共有のためのコミュニティがあり、その成功事例をNotes/Domino製品の技術者にも横展開したい、というトップの意向があった。
2.現場の想い
Notes/Domino製品の技術者は社内の様々な部署に分散していて互いに交流が少なく、技術者コミュニティの不在に対する不安があった。
3.個人の思惑
以前から試作していたNotes用のBlogテンプレートを実利用してみたい、また、コミュニティ運営のノウハウを得たいという気持ちがあった。
<目的>
1.情報の共有
障害情報を共有し、その暗黙知を吸い上げてメンバーへ伝達する。また、断片的・不確かであっても情報を共有できるような風土を確立する。
2.メンバー間の交流促進
互いに顔を知らない間柄の交流を進めることで、リアルな仕事での効率を上げる。
3.情報・価値の創出
煙草部屋での想わぬ会話のような、「ナレッジ・アクシデント」を促す。
<システム選考のポイント・・・なぜNotesにしたのか>
以下の3つの機能を持つことができれば、ブログやSNSと同じ効果を生み出せると考えた。
1.CMS機能・・・入力のしやすさ
2.個人単位のサイト・・・自分のスペースを持つことによる気安さ
3.相互リンク機能・・・トラックバック
この要件に加え、
4.文書リンク機能を使い、社内のNotesデータベースにあるリソースを活用する
5.レプリケータ機能を使い、モバイル(ローカル)環境でも使えるようにする
というNotes独自の機能を活かすため、Notesでの開発に踏み切った。
<目標>
1.アクティブメンバー数:90名(コミュニティ規模を180名としてその50%がアクティブであること)
2.意味のある情報の共有数:300件
3.Evaluateステージの投稿数:50件
元々が障害情報の共有を目的としているため、カウントは障害に関わる情報に限定する。
(ブログそのものにはLotusに関係すれば何でも投稿できるが、それはカウントしない。)
以上のような形で2006年2月に導入されたコミュニティブログですが、パイロット運用を経て現在はメンバー拡大フェーズの終盤に差し掛かっているそうです。
大川さんからは自身の経験をふまえた運用上の工夫についての紹介もありました。
「最初の頃はモデレータとしてがんばって記事を登録したのですが、やりすぎると『あそこは○○の仕切る場』と思われてしまい、他の人が投稿しにくくなるようなので、今では控えています。」
「サクラは3人以上必要です。女性や若い人にお願いすると、書く文章の自由度が違って全体の雰囲気を変えてくれます。」
「メンバーは段階的に増やしています。知っている人が書いていれば参加しやすくなるのではないかと思います。また、ただ案内のメールを送るのではなく、直接会ってプレゼンをして、趣旨を伝えるようにしています。」
「紹介メールとウェルカムメッセージで、招待したことをコミュニティ全体に通知し、新しい参加者の歓迎ムードを盛り上げるようにしています。」
システム上の工夫についても話がありました。
「丹野さんのベンチャー企業ではたらく男のブログを参考に、へぇボタンを追加しました。その時に楽しさを演出するために音声も加えました。」
「投稿は基本的にブログポータルに表示されるのですが、非表示にもできるような機能を加えました。それにより備忘録のような投稿もしてもらえるようになりました。」
「ブックマークとしてマイブロガー登録ができるようにしているのですが、自分をブックマークしている人が誰だか分かるような逆引きブックマークの機能を加えています。」
「バトンの機能をシステム化して、渡す相手を指定した上で、受け渡しの状況も分かるようにしました。」
主な導入効果は次のようなものです。
- 異なるサポートレベル間のコラボレーションの促進
- 意見収集の場として機能
- 問題意識の共有化と改善アクションへの展開
一方で次のような課題があるとも話されていました。
- プロフィールの登録推進
- 登録記事、フィードバックの推進
- 記事クオリティのアップ
- ネガティブコメント対策
ちなみに、このうちの「プロフィール登録の推進」と「記事クオリティのアップ」については、その後のグループディスカッションのテーマにもさせていただきました。
その時の様子は大川さんのブログでも紹介されています。
実際のデモを交えながらの事例紹介で会場は盛り上がり、Notesユーザーと思われる方から「クライアントのバージョンは?」「販売はしないのか?」といった質問まで飛び出していました。今のところ具体的な話はないようですが、もしかしたら・・・大川さん、これからもがんばってください!
佐々木吾朗(ささき ごろう) ENIGMA VARIATIONS |
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