--運営はどのようにして行っていますか?
当初ワーキンググループメンバーは8名でしたが、Nextiのシステム構築前にメンバーを追加募集しました。現在ではNextiと新・社内ポータルサイト合わせて約60名で運営しています。今でも随時、興味ある人は運営に加わってもらっています。
Nextiは次の5つのポリシーに基づいて運営しています。
一つ目は「本業を抱える社内ボランティアメンバーによる運営」です。
運営メンバーは本業の傍らで、社内SNS運営に携わっています。社内SNS運営に関する活動が人事評価に反映されるわけではありません。ただ想いをモチベーションにして活動しています。
必ずしも自分たちだけで運営に関わるすべての課題を解決できるわけではありません。自分たちだけで100%を求めようとせず、必要に応じて運営メンバー以外に助けを求めるようにしています。
また、利用者と同じ目線で運営することをモットーにしています。自分たちが使いたいもの、自分たちがほしいものは何か、を常に考えているからこそ、自分ごとで考えて運営にあたることができるのだと思います。
二つ目は「参加は、招待制&自己申告制」です。
招待制にした理由ですが、横のつながりを必要としている人に、口コミ効果で広げて活用してもらうことを意図しました。
たまたま職場環境上、周囲にNexti利用者がいない人もいるでしょうから、Nextiを利用したいと運営事務局に連絡をくれた人にはアカウントを発行しています。
社内システムですから、全社員に等しく一斉にアカウントを発行することも考えましたが、与えられたものを使うのではなく何らかの形で参加の意思表示をして欲しい、という気持ちで、招待制・申告制にしました。
ログインページ |
三つ目は「実名制のコミュニティ」です。
実名制については、自由な意見の交流を目指すなら匿名を認めるべきじゃないか、という議論もありました。けれども目的に立ち返ってみて、「自分ごと」で発信するには実名しかない、という結論になったのです。また、結果として誹謗中傷的な発言を抑止する効果もありました。
そして「運営者は交通整理のみ」と「多少の遊び、アソビが必要」です。
「遊びとアソビ」ですが前者は「遊び心」の「遊び」、後者は「ハンドルのアソビ」などの表現で使われるほうの「アソビ」です。
利用ルールは最低限にし、活用の仕方は社員の自由な発想に任せ、グレイゾーンを許容する、という姿勢で運営しています。
その内容が業務か遊びか、いいか悪いか、という境界線は社員個人や環境によって異なります。常識で考え、NTTデータの社員として恥ずかしくないかどうか
という基準で判断してもらえればいいのです。ひいては、それがNTTデータの“コモンセンス”を醸成することにつながれば、と考えました。
--利用状況はどうですか?
全社オープン後、毎日500人が登録して最初の4日で約2,000人が参加しました。
2006年11月14日現在の総登録数は4,869人です。
アクティブユーザー(3日に一回はログインするユーザーと定義)は約1,600人です。日記のエントリ数は一日約150エントリとなっています。
4月中旬に全社オープンしてから半年過ぎて利用状況はだいぶ落ち着いてきました。
日記の内容は、業務に関連することと雑談的な内容で半々ぐらいです。
Q&Aコーナーでは一つに質問に回答が6件ぐらい投稿されます。たいてい2時間後で回答が得られるようです。
コミュニティページ |
コミュニティ数は現在615あります。業務に関連するコミュニティは、業務に直接関係する「オン:業務」、会社生活を豊かにする「オン:生活を豊かに」、
プライベートの「オフ」という3つのカテゴリに分類しています。オンとオフは、半々ぐらいですが、オンの方が若干多いようです。
仕事に関する2つの「オン」カテゴリのコミュニティは330あります。
コミュニティをプロジェクトチームがコラボレーションスペースとして使う例もあります。
最近本社ビルの隣に新しいビルができたのですが、このビルの一階には弊社がフランチャイジーとなって経営しているコンビニがあります。このコンビニの立ち
上げや運営で、Nextiのコミュニティが活用されています。開店の周知をしたり、どういう商品があったらよいかというアイデア出しや、店舗サービスに関
する要望・指摘の共有をコミュニティで行ったのです。プロジェクトの正規のメンバーだけではなく、他の社員も様々なアイデアを寄せていました。
プロジェクトの立ち上げ時は少人数でアイデアを煮詰めることが多いと思いますが、逆にオープンに色々な人のアイデアを集めるという形態は、新たなプロジェクトの進め方の一例ではないでしょうか。
もう一つの例では、人材育成コミュニティがあります。
新・行動改革ワーキンググループで検討した全社横断型の「場」を具現化し、組織や年次を超えたコミュニケーションの実現を目指しています。育成をする、される立場それぞれで感じている悩みや疑問などを話し合い、具体的な変革に向けたアクションを起こすべく活動しています。
このコミュニティは、SNSだけではなくオフラインでのミーティングを行うことを前提に立ち上げており、SNSという気軽さと、オフラインの密度の濃いコミュニケーションをそれぞれ活かした取り組みをしています。
このコミュニティには、経営層もよく見ているようで、ときおりコメントを投稿して参加しています。
--社内SNS導入前はどのようなシステムが導入されていたのでしょうか
ナレッジマネジメントの仕組みは他社へ自慢できるぐらい整備されています。公式な全社社内ポータルももちろんあります。
社内にQ&Aサイトも既にありました。ただし、十分活用されているとは言えない状態でした。質問を投げかけるとメンター担当の社員が知っている人
を探して回答してくれる、という仕組みになっています。最初は自助作用で回答が得られることを期待していたのですが、必ずしもうまく回っていないようで
す。Q&Aの専用サイトを作ってしまうと、問い合わせしたいときにはサイトにアクセスしても、普段はなかなかサイトにアクセスしないということが
原因の1つにあったのではないかと思います。
上記のQ&Aサイトのような“公式な”社内システムと、社員個人を軸にしたNextiや社員が作る「新・社内ポータルサイト」をうまく連携していければ、と考えています。
--社員の皆さんの反応はどうでしょう?
当然賛否ありますが、「社員の人となりが見えるようになった」「自由な意見を出せる、見える場として評価する」という意見をいただきます。
社内打ち合わせの前に出席者の人となりを下調べする人もいるようですし、「ああ、あの日記を書いていた人ですね」などと知らない人同士の距離が近づいたという話も聞きます。
その他、Q&AコーナーでNextiに関する感想を集めた際の結果を一部ご紹介します。
・ちょっとした議論をする場を持てるようになった
・自分と同じような考え方をしている人がいるのがわかった
・自社で、社員発案でこんな仕掛けが実現できるなんて意外だ
・幹部の○○さんの人となりが見えて親近感がわいた
・しばらく連絡を取っていなかった同僚とのつながりが復活した
・自社に愛着がもてた
・会議で自己紹介の時間が少なくなった
・忙しいときは社内SNSの日記なんて書かないだろう、と思っていたがいい息抜きになる。
--役職や部門などで利用度合いのばらつきはありますか?
個人プロフィールページ |
部署名はフリーワードで登録してもらうようになっているので集計が難しい状況です。
また、Nexti上では役職によらずフラットにコミュニケーションしてもらいたいため、ユーザープロフィールに役職の欄をあえて設けていません。その結果、役職ごとの利用状況を集計することができません。
また、この種のサービスに慣れ親しんでいる若手社員と、企業改革の発端である経営層の利用率が高いように思われます。招待制・申告制をとっており部下があえて上司を招待しないというケースも考えられるため、中間管理職層の利用度が低い可能性はあります。
入社年次などで利用状況を集計したいのですが、密な集計・分析というレベルまでは実現できていません。
社内ポータルや社内報にもNextiのことは載せているので、中間管理職層でも知っている人は多いと思います。最近では各種メディアで何度か紹介されていますので、社外からの情報で知ったという人もいるようです。
--定量的な効果測定はしていますか?
アクセス数や日記数は毎日記録していますが、導入効果の定量的測定はでききれていません。ただ、KPI設定は優先度の高い課題と認識して検討しているところです。
感覚的には、私たちはNextiによってコミュニケーションが活発になったことを実感しています。
ただし、Nextiの効果に疑問をもつ人にも納得してもらうためにも定量的効果測定は必要ですし、NextiをNTTデータの業績に貢献するものにしたいと思っています。
個人的にはSNSも企業内にあって当たり前のツールとなっていくのではないかと思っています。社内の電子電話帳で売上があがったかを問う人はいないでしょう。いずれ社内SNSも効果と必要性が理解され、ROIを問われることもなくなるのではないでしょうか。
また、若手は入社前からmixiやGREEなどのSNSを使っています。10年後には、社内においてもSNSが当たり前の社会になっていると思います。
--経営層もNextiに参加していますか?
社長をはじめ、役員はほぼ全員Nextiのアカウントを持っています。社長自身も利用していますし、副社長も先に述べたコミュニティなどで発言しています。社員の声に直接ふれられる、と日記やコミュニティを読んでいる経営層も多いようです。
既存の社内ポータルには、社長からのメッセージを掲載するコラム欄があります。
ただし、これは会社から従業員に向けた公式なメッセージの位置づけです。それゆえメッセージが社員に間違った捉え方をされないよう、内容は必然的に、公式かつまじめで硬いものになります。
一方社内SNSでは、社長が直接本人の言葉でメッセージを伝えることができます。
社長には、「宣伝はしなくていいけど、社内SNSが価値あるものと認めていると言及してください。」とお願いしたところ、実は依頼前に誰かから招待を受け、メンバー登録をしていたようで、「もう日記も書いたよ」という状況でした。
なお、上層部には社内SNSがはじめてのSNS経験という人も多いようです。
「NTTデータの社内SNS--Nexti (3/3)」に続く
丹野瑞紀(たんの みずき) ベンチャー企業ではたらく男のブログ |
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