社内の情報共有にWikiを使う企業が増えているようです。
Wikiをどのようにして企業内で活用するのでしょうか。ブログやSNSを導入事例は雑誌やウェブサイト上でもよく目にするようになりましたが、社内でのWiki活用方法は多くの方にとってまだまだイメージしにくいのではないでしょうか。
企業内でのWiki活用の実例について、株式会社クレスコの藤本氏にお話しを伺いました。
―御社についてご紹介ください。
弊社は独立系システムインテグレータです。企業向けの情報システムの構築や、組み込み型ソフトウェアの開発などを行っています。私は、ナレッジマネジメント推進部で、社内のナレッジ共有を促進する業務を担当しています。
―社内でWikiを使い始めたきっかけを教えてください。
株式会社クレスコ ナレッジマネジメント推進部 プロジェクトリーダー 藤本樹快氏 |
昨年の2006年の8月に「Wikiキャンペーン」というのを始め、社内でWikiを使いたい部門を募集しました。
Wikiキャンペーンを始めたのは弊社会長の指示がきっかけです。
弊社の弊社会長がBusiness Week誌で、米国の企業が社内でWikiを使って情報共有を行っており、成果が出ているという記事を読んだそうです。
当時、インハウスアプリケーションを開発する部署では既にサーバーにWikiをインストールして使っているプロジェクトもありました。また、弊社では『KM/品質管理フォーラム』という機会があり、これは、コミュニティやプロジェクトで行ったKM活動や品質活動をプレゼンテーションする場なのですが、そのKM/品質管理フォーラムでもWikiを使った情報共有による業務改善の報告が行われていました。
会長からクレスコ社内でのWiki活用状況を確認されたので、そうしたWikiの利用状況を報告したのですが、その際にWikiが一部の部門だけではなく全社的に有効なツールになりうるのか、検討してほしい、と指示されました。
これが「Wikiキャンペーン」を始めたきっかけです。
―これまで社内ではどのように情報共有をしていたのでしょう
全社的にはグループウェアとしてNotesを使っています。その他に、KMシステムとして、Q&Aシステムとドキュメント共有システムがありました。ドキュメント共有システムは、精査されたドキュメントを登録する形態で、誰もが自由に登録できる形態ではありません。
インハウスアプリケーションを開発する部署など社内でもWebに関するスキルがあるところでは、WikiだけではなくSNSなども自分たちで設置して使っていました。一方で、組み込みソフトウェア系の部署ではWEBサーバーを立てること自体がなかなか難しい状況で、プロジェクト参画者だけに限って利用できるNotes以外の情報共有システムはありませんでした。
―Wikiはどのようなシステムを?
PukiWikiを使用しています。
プロジェクトの関連文書はファイルサーバー上に保存されていますので、ファイルサーバー上のファイルをポイントできるようにカスタマイズしましたが、その他はオリジナルのままです。社外からはVPNでアクセスできるようにしています。
―キャンペーンに応募した部署ではどのようにWikiを利用しているのでしょうか。
キャンペーンには7つの応募がありました。
しかし、全てが活発に利用されたわけではありません。4つはあまり利用されませんでした。
その理由はいろいろあると思いますが、一つは、目的とツールのミスマッチが理由です。Wikiというよりブログが必要なツールだったのです。部門長ブログをはじめたいということでした。
一つは、管理部門だったのですが、Wikiの仕組みがあわなかったようで、活用には至りませんでした。
残りの3つでは、プロジェクト内の情報共有に使われています。
プロジェクトのメンバーの数は、多い場合で50人、少ない場合で10人ぐらいでしょうか。
弊社のプロジェクトでは、協力会社の方など社員以外のメンバーも参加します。
全社の情報共有ツールであるNotesは社員専用であり、社外のメンバーを含むプロジェクトの情報共有をする場としては利用できません。そこで、プロジェクト内の情報共有ツールとしてWikiを使用したいとのことでした。
―プロジェクト内ではどのように利用しているのでしょうか。
組み込みソフトウェア関連のプロジェクトでの例を幾つかご紹介します。
組み込みソフトウェアでは初めて実機でソフトウェアを動作させることを『火入れ』というのですが、一回で正常に動作することは少なく、ハードウェアの設定の変更やソフトウェアの修正など何度も試行錯誤することになります。この試行錯誤の結果を、プロジェクトの複数のメンバーがチャットのようにWikiに記録していきます。
Wikiに細かな作業記録を残して共有することで、複数メンバーでの共同作業が効率化したようです。
マニュアル的な用途にも使っています。
例えばハードウェアのテスト際に使用する『治具』というものがあるのですが、この治具の使い方のマニュアルページを作っています。
新しくプロジェクトに参加したメンバー向けのチュートリアルページを作ったりもしているようです。
また、ファイルサーバーに保存されている、プロジェクトに関連する文書の一覧ページを作成して、文書の整理にも利用しています。これまで、ファイルサーバーのフォルダ階層を辿ってファイルを探していたのが、一覧ページからダイレクトにアクセスできるようになり、作業が効率化したとのことです。
その他、議事録や会議予定、休暇予定の共有に使っているようです。
会議の予定などはグループウェアで管理すべきと思われるかもしれませんが、先ほども言ったとおり、協力会社の方はクレスコのNotesにはアクセスできません。そこでプロジェクト共通の予定などはWikiで共有しています。
―Wikiの操作はみなさんスムーズにできたのでしょうか。
ソフトウェアエンジニアとはいえ組み込み系の分野ですので、Wikiは初めて使った、という人がほとんどだったようです。ただ特に操作に戸惑うことはなかったようです。
ブログなどはプライベートで使っている人もいるようです。Wikiの使い方についてのFAQサイトも用意しました。
私見ですが、うまく活用しているところでは、最初に情報の構造をある程度設計しているようです。
―プロジェクトの情報共有に、ブログを利用することは検討しましたか?
Wikiの特徴は情報を自由に構造化できる点です。
ブログですと、時系列やカテゴリ別に記事を管理することができますが、それだけでは不十分だと考えています。
―Wiki活用キャンペーンの今後の予定は?
Wiki活用キャンペーンとしての活動は一度終了し、社内でのWikiの活用についてレポートをまとめる予定です。
現在稼動しているWikiはそのまま使用します。Wikiを利用中のプロジェクトからは「Wikiが無いと困る」と言われており、業務上の必須ツールになっています。
新規で募集はしていないのですが、Wikiを使いたいという要望もいくつか出てきていて、それらには個別で対応しています。自分たちで管理するWikiを建てたいという事業部もでてきました。現在はユーザーの追加などを毎回私に依頼しないといけません。デザインの変更、プラグインの追加などを自分たちでやりたいようです。私も、このユーザー追加の問題は解決しなくてはならないと思っています。
Wikiの取り組みとは別に、SNSの仕組みを使ってプロジェクトの知識共有を行うことを計画しています。プロジェクトごとにコミュニティを作成して、プロジェクトで得た知識を蓄積し、さらに新しい知識を生み出すようなバーチャルな場所を作りたいと考えています。「Javaを仕事に使用している人向けコミュニティ」など特定のテーマで情報交換できるオープンな場にもしたいと思っています。
―ありがとうございました。
丹野瑞紀(たんの みずき) ベンチャー企業ではたらく男のブログ |
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