去る1月20日(土)、日本オラクル様のオフィスをお借りして「第5回社内ブログ/SNS研究会」を開催いたしました。当日の東京は非常に寒い一日となりましたが、研究会およびその後の懇親会まで、たくさんの方々にご参加いただきました。
今回の研究会では、社内ブログ/SNSの成功理由・失敗理由に焦点を当て、2名のゲストスピーカーの方々にそれぞれの体験談をお話しいただくと共に、グループディスカッションでは「導入にあたってのべき集・べからず集(DOs and DON'Ts)」を参加者の皆さまにお考えいただきました。
【事例紹介: NTTデータ 豊島やよい様】
まず「成功例」としてご講演いただいたのは、NTTデータの豊島やよい様。既に多くのメディアで「成功例」として報道されているNTTデータの社内SNSについて、導入・運営にあたっての裏話などをまじえながらお話し下さいました。
NTTデータの社内SNSでは、ユーザー登録にあたって招待制が取られていますが、宣伝なし・クチコミだけの広がりにも関わらず社員約8,400名のうち約5,000名が既にメンバーとして登録しているとのこと。そのうち約1,000名は1日1回ログインするアクティブユーザーで、コミュニティ数も600以上に達しているのだとか(ちなみにコミュニティのテーマが仕事関係のもの/仕事以外ものの比率は半々だそうです)。社員からは「ちょっとした議論・意見交換する場ができた」「他の社員に親近感が湧いた」など評価する声が届いており、まさしく成功事例と呼んで良いでしょう。
お話の中では、企画・運営にあたって各部署から自発的な意思で参加した「多彩な顔ぶれ」が集まったことや、「セクショナリズムの打破」という目標が掲げられ、迷ったときには最初の志に立ち返るという姿勢があったこと、運営者の役割は「交通整理」であり、みんなで一緒につくるという姿勢で臨む一方、コミュニティの雰囲気づくりや草の根協力の依頼・関連部署との調整といった活動を行ったこと、などのキーポイントが挙げられていました。成功の背景には、明確な意思を持った運営メンバーの存在が大きかったようです。
【事例紹介: iUG 平野賢司】
次に「失敗例」として、iUG事務局の平野賢司から前職での経験をお話させていただきました。彼が以前勤めていた大手総合家電メーカーでは、2005年に新規事業のアイデアとして社内ブログが導入されましたが、約1年で閉鎖に。その背景を説明すると共に、失敗理由の考察を行いました。
そもそもこの事例では、導入の際から「いま流行っているからやってみよう」という場当たり的な態度が見られたそうです。導入後は様々な問題が発生、「上手くいかないからこういう趣旨に変えよう」という目的変更が行われた結果、現場の混乱を招くことに。さらに「増えすぎた情報をさばくことができない」「その情報を成果につなげる仕組みがない」という不備も明らかになりました。けっきょく「導入したけど何も起きなかった」という評価になり、事実上「上層部の判断による閉鎖」という結果になった、とのことです。
この事例から得られた教訓として、ブログ/SNSは情報発信を行うための「ツール」に過ぎず、それを正しく使いこなすための運用体制や、発信した情報を活用する別のツール/運用体制が必要であることなどが挙げられました。また会場からは「情報がさばけないほど出されたというのは、ある意味成功ではないか?」などの意見もあり、「導入によって何をしたいのか」の設定が欠かせないことが指摘されました。
【グループディスカッション: 社内ブログ/SNS導入成功のための DOs & DON'Ts】
ゲストスピーカーによる講演の後、恒例となりました、参加者全員によるグループディスカッションを行いました。今回のテーマは以下の通り:
- 社内ブログ/SNSの導入を成功させるためのべし・べからずをそれぞれ3つお考えください(必ず3つに絞り込んで下さい)。
- 成功の定義はグループ毎にご決定下さい。
べし・べからずを羅列するのではなく、3つに絞り込むということで、皆さん「何が最も大切か」を決めるのにご苦労されたようです。また「そもそも社内ブログ/SNSの成功とは何か?」という前提について、改めて考えてみる機会となったようでした。
成功の定義については、「知識共有」「社内コミュニケーションの活性化」といったスタンダードなものから、「社員の○パーセントがユーザーとなり、そのうちアクティブユーザーは○パーセントであること」といった定量的なもの、「社員が気持ちよく働けるようになる」といった定性的なものまで、様々な意見が出されました。
それに対する「べし集」としては、経営層の認知・コミットを求める、「性善説」に立って社員だけで適切な運用ができることを信じるといった意見、「べからず集」としては、ネガティブな意見も許容する、発言を無理強いしない、過度な期待をしない・早急な効果を求めないといった意見が出されました。やはりブログ/SNSが自発的な発言・コミュニケーションを行うツールであるということから、「自由」という点を1つのキーワードとするチームが多かったようです。
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研究会も第5回となり、1年前の雰囲気と比較すると、話の方向性が「本当に使えるのか」「導入しても使う人がいるのか」というものから、「今度導入する(した)が、成功させるにはどうすれば良いか」「そこで発言される内容をどうリードすべきか」というものに変わってきているように感じます。しかし参加者の皆さまの熱意は以前と変わらないままであり、iUGとしても皆さまの関心に沿う形で議論・知識共有の場を提供していければと考えております。今後も iUG の活動にご期待下さい。
小林啓倫(こばやし あきひと) POLAR BEAR BLOG |
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